What's new (2004年)
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動脈硬化におけるプロスタノイドの機能解明!

プロスタノイドの一つ、TXA2は、血小板から合成され血小板活性化、血管平滑筋収縮作用をもつ。一方、PGI2は、血管内皮より産生され血管平滑筋弛緩作用、血小板凝集抑制作用を持つ。この両者のバランスが、止血や血栓など血管ホメオスタシスの維持に重要であると考えられてきた。しかし、これらプロスタノイドが、慢性の血管病変、とくに、動脈硬化にどの程度重要な働きをしているかは、明らかでなかった。

今回、小林らは、動脈硬化を自然発症するapoE欠損マウスと、TXA受容体欠損マウス、PGI受容体欠損マウスの各々を掛け合わせることで、この問題に対する検討を行った。
その結果、TP欠損により動脈硬化病変の抑制が、一方、IP欠損により動脈硬化の促進が認められた。これらの解析から、TXA2はTPを介して動脈硬化の促進因子として、一方、PGI2はIPを介して動脈硬化の抑制因子として、生体内で働いていることが明らかとなった。

45週齢マウスの無名動脈における動脈硬化病理組織切片(HE染色)
45週齢マウスの無名動脈における動脈硬化病理組織切片(HE染色)
野生型マウス(中)に比較し、TXA受容体欠損マウス(左)では動脈硬化が有意に抑制され、PGI受容体欠損マウスでは顕著に進展し、ほぼ動脈を閉塞するまでになっていることがわかる。

( Kobayashi et al., J Clin Invest., 114, 784-94, 2004 )

 

Cdc42-mDia3 経路による染色体分離の制御?細胞分裂でのRho GTPase 経路の新しい役割示される!

コントロール細胞とToxin B 処理細胞の分裂中期像
コントロール細胞とToxin B 処理細胞の分裂中期像
正常分裂では分裂中期に染色体は正中線上に配列するが(左)、Toxin BでRho GTPases を不活化したものでは、染色体は、紡錘体極近くに散在しており正常な配列は見られない(右)。

これまでRho GTPases の細胞周期での働きとしては、Rho, Rac, Cdc42 によるG1->S 期進行の制御やRhoによる細胞質分裂の制御が知られていたが、Rho GTPases が核分裂に働くかどうかは全く不明であった。

今回、保田真吾特任助教授(先端領域融合医学研究機構)、Fabian Ocegura-Yanez 大学院生は、Cdc42とそのエフェクターmDia3が、染色体の紡錘体微小管とのbiorient な結合とその安定化を制御することにより、染色体配列と分離に関与していることを示した。

このことは、Rho GTPasesすべてを不活化するToxin Bや各々のRho GTPaseのdominant negative 体を用いた実験、mDia3のRNAiなどにより示された。また、mDia3がtoxin B感受性にkinetochoreに局在することも明らかにされた。

これらの結果をもとに、今後、この経路が分裂全体を制御しているCdk-cyclin Bの経路とどのように関わるか、また、mDia3がどのようにして微小管の結合と安定化を触媒するか、などへ研究が発展することが期待される。後者の点は、これまで明らかにされてきたmDia蛋白質のアクチン重合の活性とどのように関わるかも含め興味深い。

Yasuda et al., Nature, 428, 767-771, 2004

 

mDia1 の細胞内での動き解明!

上述のように、mDiaは、in vitroでアクチンの核化・重合に働くことが示されたが、これが細胞内でどのように挙動しているかは不明であった。

今回、渡邊直樹助教授、東田知陽大学院生らは、mDia1の活性化変異体をGFP融合蛋白質としてXenopus XTC線維芽細胞に低レベルで発現させ、その単分子としての挙動を生細胞で捉えることに始めて成功した。

これにより、活性化mDia分子が、細胞内で2mm/secの速度で直線的に数10 mmも移動しうること、この動きはアクチン重合に依存していることが明らかとなった。in vitroでは、この分子が伸長するアクチン線維のbarbed endに連続的(プロセッシブ)に結合することも見出した。

これらの結果から、活性化mDiaは細胞内でもアクチン線維の成長端に存在し、重合とともに移動していると推測される。mDiaを含むformin分子は、モーター蛋白質とは独立した細胞内motility machineryとして働いているかもしれない。

Higashida et al. Science, 303, 2007-2010, 2004

 

mDia1 FH2 ドメインの構造解明!

mDia1のFH2コアドメイン構造
mDia1のFH2コアドメイン構造。
3つのサブドメインが、red・blue・greenの色別で示してある。

mDia1はRho effectorの一つとして当教室で同定され発現実験からアクチン繊維の誘導に働くことが提唱されていた(Watanbae et al., EMBO J., 16, 3044-3056, 1997; Watanabe et al., Nat. Cell Biol., 1, 136-143, 1999)。この蛋白質は、formin ファミリー蛋白質の一種で、このファミリーに共通のFH1、FH2といった相同ドメインをもつ。最近、mDia関連蛋白質のFH2を含む領域がin vitro でアクチン重合を促進することが示されていた。

今回、Max-Planck 研究所の嶋田睦、Alfred Wittinghoferらのグループらは、我々のグループとの共同研究で、mDiaの338アミノ酸からなるFH2ドメインの結晶構造の解明に成功した。これにより、FH2ドメインは、α helix に富む3つのサブドメインからなる長径75Åの半月状の構造であることがわかった(左図)。

興味深いことに、FH2ドメインは、単量体で存在しF-actin のbarbed end に結合するが、アクチン重合は促進せず、このドメインよりN端側のリンカー部分を75 アミノ酸分延長した断片は、ホモ2量体を形成しアクチン重合を促進した。

今後、これらドメインとアクチンとの複合体の構造解析により、更に、mDiaを介するアクチン核化・重合の機構が解明されることになる。

( Shimada et al., Mol. Cell, 13, 511-522, 2004 )